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日別アーカイブ: 2025年4月16日

第8回牧場雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社前川農場、更新担当の中西です。

 

今回は、育成計画についてです。

 

日本国内における畜産業の中でも、食用牛(肉用牛)の生産は、ブランド化・高付加価値化が進み、地域経済を支える重要な産業となっています。特に和牛(黒毛和種)を代表とする肥育牛は、世界的にも評価が高く、「命を育てる責任」と「品質を守る覚悟」が求められます。

食用牛の牧場経営における育成計画について、導入・育成・肥育・出荷までの流れを体系的に解説し、加えて環境管理・飼料戦略・経営の視点からも深掘りします。


🐄 1. 肉用牛の分類と育成の流れ

日本の食用牛は主に以下のように分類されます

分類 特徴
黒毛和種(和牛) 霜降り肉、長期肥育、ブランド牛(例:松阪牛)
褐毛和種・日本短角種 赤身中心、放牧適性高め
ホルスタイン種(乳牛の雄) 安価で安定供給、交雑種に使用される
交雑種(F1) 和牛×ホルスタインなど、バランス型

育成計画の流れ(例:黒毛和種)

  1. 子牛の導入(生後約8か月)

  2. 育成期(8か月〜12か月)

  3. 肥育期(12か月〜30か月)

  4. 出荷・格付(枝肉格付、歩留まり等)


🌱 2. 育成計画①:子牛導入と育成期の戦略

◯ 子牛導入の注意点

  • 健康状態(腹囲、毛艶、活力)

  • ワクチン接種歴の確認(肺炎、下痢予防)

  • 血統・個体履歴の記録確認(登記番号)

導入後1週間は“馴致期”として慎重に管理し、ストレスや環境変化による体調変化を抑えます。

◯ 育成期(8〜12か月)のポイント

  • 骨格の成長促進が目的

  • 高タンパク飼料を中心とし、脂肪の蓄積を抑制

  • 骨格が整っていないと、肥育期の肉付き・格付に悪影響


🥕 3. 育成計画②:肥育期における体重管理と飼料設計

◯ 肥育の3段階モデル(和牛肥育の例)

期間 特徴 目標
初期(12〜18か月) 成長重視 骨・筋肉の発達
中期(18〜24か月) 体格維持+脂肪蓄積 歩留まりの向上
仕上期(24〜30か月) 霜降り肉の形成 見た目・食味の最終調整

◯ 飼料設計のポイント

  • 濃厚飼料(トウモロコシ・ふすま・大豆粕)を中心に給与

  • 乾草やサイレージなどの粗飼料は胃腸の働きを助ける役割

  • タンパク質、エネルギー、ビタミン・ミネラルを時期ごとに最適化

配合飼料メーカーの協力を得て、飼料分析→給与計画→モニタリングというPDCAを徹底。


🧼 4. 環境・健康管理:品質と命を守る

◯ 牛舎環境

  • 換気と湿度管理が重要(夏場は熱中症リスク)

  • 清掃と糞尿処理を徹底(アンモニア臭や衛生悪化は病気の元

◯ ワクチンと疾病予防

  • 肺炎・下痢・口蹄疫・牛流行熱などの予防

  • 定期的な健康チェック(体温・歩様・反芻確認)

導入前・出荷前には必ず全身状態と血液検査を実施し、異常があれば出荷延期など判断します。


💴 5. 経営視点での育成計画とリスク管理

◯ コスト管理

  • 飼料費:約6〜7割が経費の中心

  • 獣医・薬品費、光熱費、糞尿処理コストも計上

  • 出荷時の市場価格と収益性分析を常時実施

◯ 出荷と枝肉格付

  • BMS(霜降り度)、ロース芯面積、脂肪の色・硬さ

  • 肥育成績(増体重、肥育日数)と連動して販売価格が決定

  • 出荷先は市場・直販・ブランド化ルートなど複数持つのが理想

◯ 収益最大化のポイント

  • 1頭あたりの歩留まりと格付の向上

  • 飼養頭数と飼料効率のバランス

  • ブランド牛登録による販売単価の引き上げ


🌏 6. 持続可能性と新しい畜産経営の動き

  • 糞尿を堆肥として循環利用(地元農家と連携)

  • 放牧型肥育によるコスト削減と動物福祉向上

  • ICT・IoT活用(体調モニタリング、給餌自動化)

  • 環境負荷低減型経営としてカーボンフットプリントの表示

消費者の関心は「おいしさ」だけでなく、育て方・命との向き合い方にも広がっています。


✅ 食用牛育成計画は“命と経営”のバランス設計

食用牛の育成とは、単に太らせることではなく、命を育て、その命に感謝し、最大限の価値を引き出す仕事です。そのためには、科学的知見と経験に基づいた緻密な育成計画が求められます。

📝 育成成功のポイント

  • 血統と健康に優れた子牛を導入

  • 時期ごとに最適な飼料と環境管理を実施

  • 経営分析と販売戦略を同時に構築

  • 持続可能で社会に信頼される牧場経営を目指す

 

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