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第7回牧場雑学講座

皆さんこんにちは!
株式会社前川農場、更新担当の中西です。

 

今回は、個体毎の質についてです。

 

牛肉は、その柔らかさ、脂の入り方、風味の深さなどによって評価されます。一般的に「ブランド牛」や「A5ランク」といった言葉が注目されがちですが、実は同じ品種・同じ飼育環境で育った牛でも、一頭ごとに肉の質感は異なります

なぜ牛によって肉の質感が違うのか?その秘密は、品種・育成環境・餌・ストレス・個体差といった複数の要素にあります。本記事では、食用牛の育成と肉質の関係について深掘りし、一頭ごとの違いが生まれる理由を詳しく解説していきます。


1. 肉の質感を決める3つの要素

牛肉の「質感」は、主に柔らかさ・脂の質・赤身の風味の3つの要素で決まります。

① 柔らかさ(食感)

  • 筋繊維の細さが影響する(細いほど柔らかい)。
  • **脂肪の入り方(サシ)**によって、口どけが変わる。
  • 運動量が多い部位(スネ・モモ)は筋繊維が発達し、硬めの食感に。

② 脂の質(霜降りの入り方・口溶け)

  • 脂肪の融点(溶ける温度)が低いと口溶けが良く、なめらかな食感に。
  • 牛の品種・餌の内容によって脂の質が変わる。
  • 黒毛和牛は融点が低く、脂が甘くてまろやか。

③ 赤身の風味(肉の旨味・ジューシーさ)

  • 筋肉中のミオグロビン量が多いほど、濃厚な風味になる。
  • 運動量が多いと赤身のコクが増すが、肉質は硬めに。
  • 穀物肥育の牛はまろやか、牧草肥育の牛は風味が強くなる。

同じ牧場で育てられた牛でも、これらの要素が微妙に異なるため、一頭ごとに異なる肉質になるのです。


2. 個体ごとに肉の質感が異なる理由

① 品種の違い

牛の品種によって、筋肉の付き方や脂の質が大きく異なります。

  • 黒毛和牛(日本の高級和牛)

    • 筋繊維が細かく、柔らかい肉質。
    • 霜降り(サシ)が入りやすく、脂の質が良い。
    • 甘みのある脂と、なめらかな舌触りが特徴。
  • ホルスタイン(乳牛の雄牛)

    • 筋肉質で、赤身がしっかりしている。
    • 霜降りは少なめで、赤身の旨味が強い。
    • しっかりとした歯ごたえがあり、焼肉やステーキ向き。
  • アンガス牛(アメリカやオーストラリア産)

    • 赤身と脂のバランスが良い。
    • 霜降りは控えめだが、ジューシーな食感。
    • 牧草肥育が多く、肉の風味がしっかりしている。

同じ育成環境でも、品種ごとの特性が肉質に大きく影響します。

② 飼育環境(運動量の違い)

牛が育つ環境によって、筋肉の発達具合や脂肪の付き方が変わります。

  • 広い牧場で放牧されて育った牛

    • 運動量が多いため、赤身が発達し、締まった肉質になる。
    • 霜降りは少なめで、赤身の風味が強い。
  • 狭い牛舎でストレスなく育った牛

    • 運動量が少ないため、柔らかく、霜降りが入りやすい。
    • 和牛は特にこの環境で育てられることが多い。

運動量の違いが、肉の締まり具合やサシの入り方に影響を与えます。

③ 餌(穀物 vs 牧草)

牛の餌は、肉質に大きな影響を与えます。

  • 穀物(トウモロコシ・大豆など)主体の肥育

    • 霜降りが入りやすく、まろやかな肉質に。
    • 脂の融点が低く、口どけが良い。
    • 和牛やアメリカの高級アンガス牛に多い。
  • 牧草主体の肥育(グラスフェッド)

    • 赤身が多く、肉の旨味が強い。
    • 霜降りは少なめで、筋肉が発達するため歯ごたえがある。
    • オーストラリアやニュージーランドの牛に多い。

同じ品種でも、餌の違いだけで肉の質感が大きく変わります。

④ 成長速度・肥育期間の違い

牛の肥育期間(何ヶ月間育てるか)によっても、肉質は変わります。

  • 短期間(18~24ヶ月)の肥育

    • 赤身が多く、霜降りは控えめ。
    • 引き締まった食感で、肉の風味が強い。
  • 長期間(30~36ヶ月)の肥育

    • 霜降りが増え、肉が柔らかくなる。
    • 和牛は長期肥育が一般的。

成長の仕方によって、肉の質感が大きく変わるのです。


3. 「同じ牛」でも部位によって質感が違う

牛の肉は、部位によっても食感が大きく異なります。

  • サーロイン・リブロース(背中側)

    • 霜降りが入りやすく、柔らかい。
    • 和牛の高級ステーキに最適。
  • ヒレ(腰の内側)

    • 最も柔らかい部位で、脂が少なめ。
    • 上品な味わいで、高級レストラン向き。
  • 肩ロース・ウデ(前足側)

    • ほどよい霜降りと、適度な歯ごたえが特徴。
    • すき焼きや焼肉に向いている。
  • モモ・スネ(後ろ足側)

    • 赤身が多く、しっかりした食感。
    • 煮込み料理(ビーフシチューなど)に最適。

一頭の牛の中でも、肉質のバリエーションが豊富なのが特徴です。


4. まとめ——牛ごとに異なる「肉の個性」を楽しむ

食用牛の肉質は、品種・育成環境・餌・肥育期間・部位の違いによって大きく変わります。

和牛は霜降りが多く、まろやかで柔らかい。
ホルスタインやアンガス牛は赤身がしっかりしている。
運動量が多いと締まった肉質、少ないと柔らかい肉質に。
穀物肥育は脂の質が良く、牧草肥育は赤身の旨味が強い。

「同じ品種の牛でも、個体ごとに肉の質感が違う」という奥深さを知ると、牛肉の楽しみ方がもっと広がります!

 

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